二次相続まで考えた相続対策の重要性を徹底解説!

相続に伴い相続人間でトラブルが生じることも珍しくありません。しかし相続対策においては全員が協力することが大切で、特に二次相続まで考えて対策するときには、誰がどのような財産をどれだけ取得するのか、よく話し合わなければなりません。

以下で具体的な対策方法や注意点などを解説していきますので、二次相続対策の重要性を理解し、全員で協力して進めていけるようにしましょう。

二次相続とは

二次相続は、一次相続とセットで理解することでイメージしやすくなります。

そこで、夫と妻、2人の子がいる家庭を考えてみましょう。このとき夫が亡くなると、通常はその妻と子が相続人になります。その後さらに妻も亡くなると、子のみが相続人となります。

先の相続(相続人が妻および子となる相続)を「一次相続」、後の相続(相続人が子のみとなる相続)を「二次相続」と呼びます。

そして一次相続においては妻とその子2人が夫の財産を取得します。半分を妻に、残りの半分を子で分けることになります。続いて妻が亡くなることで、夫から取得した財産も含めた財産が子2人へと引き継がれることになります。

ここで注意したいのが税金の問題です。相続税が課税されると、例え配偶者や親からの財産であってもその額に応じた納税をしなければなりません。

そこで、できるだけ納付額を下げたいのであれば各相続において対策を取ることになりますが、2つの相続におけるトータルの納付額を下げるのであれば、一次相続の段階で二次相続まで視野に入れた対策を取らなければなりません。

配偶者の有無が一次相続との大きな違い

二次相続では配偶者がいません。これが一次相続との最も大きな違いであり、特別に対策を取らなければならない大きな理由の一つです。

配偶者の有無は、結果として様々な特例の適用可否に関わってきます。また法定相続人の数も減ることになるため、そのことによる影響も出てきます。

二次相続対策のシミュレーション

それでは二次相続を意識した対策がいかに重要であるか、納税額を比較して評価していきましょう。

上の4人家族を例に、

①一次相続ですべての財産を妻に取得させる

②法定相続分そのままで取得させる

この2パターンでシミュレーションしていきます。

なお課税価格は2億円として計算し、基礎控除および配偶者控除以外の控除は適用しない、とてもシンプルな状況で考えていきます。

①のパターンだと、後述する配偶者控除の効果により、妻1人が2億円もの財産を得たとしても、相続税額は540万円で済みます。

これに対し②のパターンでは、相続税額が1,350万円となります。

配偶者控除では非常に大きな額を控除させることができるため、妻が多くの財産を取得することで納付額を下げることができるのです。

次に二次相続についても見ていきましょう。

①のパターンでは過去に妻が取得した財産がそのまま子2人に引き継がれ、納付額は2,878万円になります。

これに対し②のパターンではすでに子が半分の財産を取得しているため、納付額は620万円で済みます。

下表でこれらの結果を見比べてみましょう。

 パターン①パターン②
一次相続での税額540万円1,350万円
二次相続での税額2,878万円620万円
合計3,418万円1,970万円

 

結果として、トータルの納付額は

①で3,418万円

②で1,970万円

と、大きな差が生じていることが分かります。節税をしていたつもりでも、納税を後回ししただけになっています。

このシミュレーションではごくシンプルな状況を仮定していますので、実際にはもっと複雑な計算が必要となるでしょう。しかし大切なのは今のことだけを考えるのではなく、次に起こる相続まで見据えるということです。

二次相続で注意すべき税制控除

相続税額は、控除の適用状況によって大きく左右します。そこで適用機会が多い控除、効果の大きい控除に関して以下で説明していきます。

基礎控除

相続税を計算する上では、遺産の評価を行い課税価格の算出をしますが、この課税価格がある基準額以下となれば納付義務がなくなります。

これが基礎控除の制度です。常に適用されるもので、その額は下の計算式を用いて算出されます。

基礎控除額 = 3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

つまり法定相続人の数が増えるほど納税額は下がることになります。

二次相続に関して言うと、配偶者の1人分、法定相続人が減ることになりますので、控除額も600万円減少することになります。

配偶者控除

配偶者控除は、被相続人の配偶者のみに適用される控除のことで、1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額までは課税されなくなります。

そのため、法定相続分相当額なら何億円取得しても控除されますし、法定相続分相当額を超える場合であっても1億6,000万円までは相続税がかからないということになります。

そのため納付が免除されるというケースは多いです。

ただ注意したいのは一次相続でしかこの控除が使えないということです。「配偶者控除があるから財産のほとんどを取得しても問題ない」と考えて遺産分割していると、二次相続のときに子が大きな財産を取得することになり、それに応じて大きな税額を納付しないといけなくなります。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例も相続税の負担軽減に大きな効果を発揮する制度です。被相続人等が使っていた宅地等は、要件を満たせば330㎡のにつき最大80%の減額効果が得られるようになっています。

要件は細かく定められていますが、一緒に住んでいた配偶者なら適用できることが多く、一次相続では比較的利用しやすいと言えるでしょう。

一方二次相続の場面では、子が自立し親と別に自宅を持っているのであれば適用させるのは難しいでしょう。別居している者が取得する場合、基本的に適用させられないからです。

そこで、子が別居している場合には当該特例および配偶者控除とのバランスを考え、土地の取得者をよく検討することが大切です。

相次相続控除

二次相続に特化した「相次相続控除」というものもあります。

これは一次相続時に納付した金額に関して、二次相続までの期間が短いほど大きな控除が受けられるというものです。この期間は10年以内でなければならず、二次相続における相続人も同じ子であることなどの要件があります。

要件を満たせば「一次相続の相続税額から、1年経過ごとに10%を引いた金額」を控除できるようになります。要は、すぐに次の相続が始まると大きく控除され、10年を過ぎるとその効果はなくなるということになります。

二次相続向けの具体的相続税対策

次に、納付額を下げるために有効な具体的対策を説明していきます。

小規模宅地等の特例を適用させる

親と子が同居している場合、もしくは二世帯住宅を検討している場合には小規模宅地等の特例を適用させられるようにすると良いでしょう。特に配偶者控除との兼合いは重要です。

例えば同居している子がおり、当該特例が使える場面では、妻や夫が土地を取得するのではなく、子が取得したほうが節税になるケースが多いです。なぜなら妻や夫はわざわざ特例を利用せずとも、配偶者控除により実質課税をゼロにすることが可能だからです。

また二世帯住宅であってもここで言う「同居」に含めることができるため、居住スペースを別にしながらこの控除を受けることができます。現在二世帯住宅になっていない場合でも、手持ちの預貯金を使って改築すれば、さらに節税効果を高めることができます。現金等だとそのままの価値で評価されますが、不動産に形を変えれば経年により評価額が下げられるからです。

ただ、この場合には「区分所有の登記」までしていると同居と判断してもらえず、特例が適用されない可能性が高くなるため注意が必要です。これに対して「構造上の区分」に関してはあまり問題視する必要はないでしょう。例えば、居住スペースが完全に分離されているかどうか、家の中で自由に行き来できる構造かどうかということです。

仮に構造上の区分がされ、入り口が別に設けられているような状態であったとしても、区分所有登記がされていなければここで言う同居に該当するため、特例が適用できるということになります。

生命保険の活用

生命保険への加入も対策として有効です。将来的に相続財産になると考えられる金銭を保険料として支払うことで課税を避けることができるとともに、保険金を受け取ることが可能になります。しかし、保険金は「みなし相続財産」となるため、ある基準額を超えると課税対象になってしまうため注意が必要です。この基準額は下のように算出されます。

非課税額 = 500万円 × 法定相続人数

そこで子2人が法定相続人であれば、二次相続においても1,000万円までは非課税にすることができます。

生前贈与を行う

生前に贈与をしておくことで、財産を減らすことができます。ただし年110万円を超えると贈与税がかかってしまいますし、生前贈与加算の制度もあるため、計画的かつ長期的な贈与をしていかなければなりません。

なお生前贈与加算とは、相続開始前3年以内にした贈与を相続における財産として加算する制度です。年110万円などの基準はないため、贈与税に関して非課税にできていたとしても、3年以内であれば節税効果はなくなってしまいます。

養子縁組を行う

二次相続で問題とされることの一つは「法定相続人が減る」ということでした。しかし養子を迎えることによって法定相続人は増やせますので、基礎控除額を増加させ、課税額を減少させることが可能です。

ただしここでも注意点がいくつかあります。

一つ目は、法定相続人としてカウントできる数に制限が設けられているということです。実子がいる場合には追加で1人まで、実子がいない場合には追加で2人まで、とされています。縁組自体が制限されるわけではありませんが、税額計算上の上限が設けられています。

二つ目は、孫を養子にした場合などには税額の計算において2割増しになるということです。養子縁組による過剰な節税を抑制するために設けられています。

三つ目は、親子関係を築く意思がなく、明らかに節税目的でしかないような場合には縁組が無効になってしまう可能性があるということです。節税の目的が含まれているというだけでは通常無効となりませんが、縁組の意思に関して疑われるような事情がある場合には注意しなければなりません。

まとめ

以上で、二次相続対策の重要性、有効な対策などを解説してきました。

ポイントは「一次相続において配偶者がどのような財産をどれだけ取得するのか」「小規模宅地等の特例の適用可否」「その他控除の適用可否の判断」「生前贈与や生命保険の活用」などを検討するということでしょう。

そして対策は計画的に早い段階で着手するとともに、よく話し合い、全員で協力することが大切です。分からないことがある場合には専門家のサポートを受け、円滑に進められるようにすると良いでしょう。

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