崖地や傾斜地とは?有利に売却する方法を解説

崖地(がけ地)や傾斜地は整地された土地とは勝手が違うためどのように活用すれば良いのか悩む方は少なくありません。

土地用途の法令が厳しく住宅を建設するには膨大なコストや時間がかかるためです。

一方で、土地の活用が難しいにもかかわらず固定資産税などは課税されるため疎ましく感じている方も多くいます。早々に手放したいと考えている方も珍しくありません。

そのため、この記事では「崖地や傾斜地」について建築物を建設する際の費用や売却方法も交えながら詳しく解説していきます。

崖地や傾斜地の処分に悩んでいる方は、最後まで読んで参考にしてみてください。

崖地(がけ地)や傾斜地とは?

一般的に崖地(がけ地)とは傾斜が急なため住宅地として利用困難な土地のことを指します。

崖地の大半は山林や丘陵など自然に成形された高低差がある土地です。

しかし、土地を造成(人工的に土地の形を変えること)する際の盛土や切土によってできた高低差がある土地も存在します。

一方で傾斜地はその名の通り斜めに傾いている土地のことで、崖地とは異なり住宅地として活用することができます。

ちなみに崖地や傾斜地は法令で厳密な定義が定められているわけではありません。

例えば建築基準法には「がけ地」の名称が記載されていますが、傾斜地の名称やどのような土地が該当するのかは明記されていないのです。

がけの定義は各地方自治体によって異なる

崖池の定義は各地方自治体によって定義が異なります。

通称「がけ条例」と呼ばれており、どのような土地が「がけ地」に該当するのか明記されています。

例えば、神奈川県の場合は「神奈川県建築基準条例」で、以下のように定義されています。

がけは、こう配が30度を超える傾斜地をいう(第2条の3)
高さ3メートルを超えるがけ(第3条)

このように、土地の高さや角度が明確に定められています。

そのため保有している土地が属する自治体のホームページで確認するようにしてみて下さい。

参考:神奈川県建築基準条例

建物を建築することはできるの?

安全性が確保された崖地や傾斜地であれば建設することが可能です。

そのことは建築基準法19条4項に「建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれがある場合においては、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない」と規定されています。引用:法令検索 e-GOV

この法律を逆手にとるとコンクリートやブロックなどで土砂崩れや崖崩れが起きないように擁壁工事を行えば、建物を建てられると読み解くことが可能です。参考:法令検索 e-GOV

高低差が大きい場合は法律によって建築の規制が課せられる

高低差が大きいがけ地や傾斜地で建物を建設する場合は国土交通省が定めた「土砂災害防止法・急傾斜地崩落危険防止法」により、厳しい規定が設けられています。

具体的には高低差5mを超えるがけ地や30度以上の急傾斜が近くにある土地の中で「土砂災害特別警戒地区」に指定されているエリアは、建設前に行政による建築確認が必要です。

そのため保有している土地が土砂災害特別警戒地区に指定されている場合は、行政から安全だと認められない限り建設工事を開始することができません。

万が一、認められなかった際は許可を得るための工事が必要となるため工事費用が高額になる可能性があります。参考:国土交通省

加工していない崖地や傾斜地は売却が困難

崖地や傾斜地は整地された土地と比べると売却が難しくなります。

安全性が確保するための工事だけでなく宅地造成も行う必要があるためです。

さらに崖地や傾斜地は地盤が安定していないことも多く自然災害の影響を受けやすいというデメリットもあります。

このため、土地購入を検討する際はがけ地や傾斜地を避ける人がほとんどです。

したがって加工していない崖地や傾斜地の売却を検討している場合は「売却できない可能性」も覚悟する必要があります。

宅地造成とは?

宅地造成とは「宅地以外の土地を住宅地などにするため、土地の形質を変更する」ことです。

例えば森林や農地など高低差のある土地を整地することや、軟弱な地盤の土地や工場跡地を住宅が建てられる状態に戻すことが該当します。

これらの工事は建築物を建てる際に必要不可欠です。

仮に軟弱な土地で地盤改良が行われないと自然災害が来たら倒壊や崩壊してしまいます。

そのため宅地ではない場所に建築物を建てるためには、傾斜面を平にするための「切土」や「盛土」、地盤を強化する「地盤改良」などの宅地造成工事を行わなければなりません。

宅地造成等規制法により宅地造成を行う場合は許可が必要

宅地造成に伴い、がけ崩れなどの災害が起こる恐れがある場合は「宅地造成等規制法」により、都道府県の知事や権限を与えられた自治体から工事着工の許可を受ける必要があります。

このため指定区域内の工事を行う場合は地盤改良や擁壁工事の計画が技術基準に適合していると認められたうえで、知事などから工事許可(宅地造成工事を行うことの許可)を受けないと工事を開始することができません

また、工事終了後にも基準を満たした宅地造成が行われたのか行政による検査が行われます。

万が一、その検査で基準に満たしていないと判断された場合、再度造成工事を行うよう指示されるので注意が必要です。

ちなみに「宅地造成等規制法」とは、1961年に「がけ崩れや土砂が流れ込む災害などが起こる恐れがある区域内での宅地造成工事について、防災のために必要な規制」を目的に制定された法律です。

各都道府県知事が災害が発生する恐れがある地区を「宅地造成工事規制区域」に指定することで住民の人命や財産を守る役目を果たしています。

宅地造成工事にかかる費用

宅地造成工事にかかる費用は各都道府県の国税局ごとに金額が定められています。

ここでは神奈川県を例に以下の表にまとめたので確認して下さい。

こちらの表は「路線価図・評価倍率表 令和2年(神奈川県)」のデータを基に、平坦地を住宅地に変更した場合の価格です。

工事項目1平方メートルあたりの金額
整地費700円
伐採・抜根費1,000円
地盤改良費1,800円
土盛費6,900円
土止費70,300円

このように基本的に宅地造成に必要となる工事ごとに金額が定められています。

大まかな費用を知りたい方は上記の価格を基に保有している土地の規模にあわせて計算してみて下さい。

また、傾斜地を造成する場合は上記の料金とは別に傾斜度ごとに金額が定められています。

詳細は下記の表をご覧ください。

傾斜度金額
3度超・5度以下18,600円/m2
5度超・10度以下22,800円/m2
10度超・15度以下34,900円/m2
15度超・20度以下49,500円/m2
20度超・25度以下54,700円/m2
25度超・30度以下57,900円/m2

傾斜地の価格は整地費や土盛費、土止費の宅地造成に必要な全ての費用を含めた金額です。

この価格の中には伐採や抜根費は含まれていないため、伐採・抜根が必要となる場合は「平坦地」の金額を基に算出し、該当する傾斜度の金額に加算して下さい。

参考:路線価図・評価倍率表 令和2年(神奈川県)

崖地や傾斜地は業者の不動産買取で確実に売却

がけ地や傾斜地に建物を建設する場合は莫大なお金や時間がかかります。

整地された土地とは異なり宅地造成工事や擁壁工事など建築物以外の工事が必要なためです。

そのため一般の買主が付きにくく宅地造成工事をしてからでないと売却できないことも珍しくありません。

そうなると土地の規模によっては膨大な資金を用意しなくてはなりません。

しかし、莫大な資金を掛けて宅地造成してしまうと赤字になるため結局は売却出来なくなってしまいます。

一方で、不動産会社の「不動産買取」を利用すると確実に売却できるうえに早々に土地を現金化することが可能です。

とはいえ、不動産会社であれば何処でもいいわけではありません。

専門知識を有している専門業者でないと取り扱えないことが多いため、専門業者に依頼するようにしてください。

不動産会社に仲介を依頼して売却すれば良いのでは?

崖地や傾斜地の売却で不動産会社の「仲介」を利用した場合、造成が必要となる土地を希望する買主は少ないため、売却は容易ではありません。

例えば、傾斜地を宅地として利用できるようにするためには、土地の一部を2m以上切り取る(切土)ための宅地製造工事の許可が必要となります。

この手続きは煩雑なうえに余分なコストがかかるため、すき好んで崖地や傾斜地を購入する買主はいません。

一方で、崖地や傾斜地の取り扱いになれている不動産業者は崖地や傾斜地を直接買い取ってくれます。

確実なうえに時間をかけることなく売ることができるため、専門業者による直接買取りの利用がおすすめです。

販売が困難となる不動産は専門知識を保有した不動産会社がおすすめ

不動産会社でも、崖地や傾斜地のような難がある不動産を買い取ることを懸念する業者は珍しくありません。

対象となる土地の問題改善を行うための知識を保有していないため、断られたり相場よりも安い金額を提示される可能性があります。

したがって、業者に買取りを依頼するのであれば「専門の知識を保有している不動産会社」に依頼することがおすすめです。

問題がある不動産の取り扱いに慣れているため、知識や経験を活かして適切な金額を提示してくれます。

まとめ

崖地や傾斜地は法律により擁壁工事や行政の許可が必要になるため膨大なコストや時間がかかります。

そのため、保有しているがけ地や傾斜地の取り扱いに困っているのであれば不動産会社の買取りの利用を検討してみて下さい。

売却できないことで困ることもなく短期間で土地を現金化することができます。

ただし、不動産会社といっても何処でもいいわけではありません。

不動産会社によっては買取を拒まれたり安値を提示してくる企業もあるため崖地や傾斜地の取り扱いに長けた業者に依頼することが重要です。

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