土地を等価交換した際の特例とは

1991年に制定された生産緑地か制度(市街地の計画的な農地の保全)が2022年に終了します。その間、固定資産税が押さえられていました。そして30年後に自治体が買い上げる予定でしたが財政的に厳しくなり、その約束も守れない状況にあります。

超高齢化社会に伴い、後継者のいない農家が増加し、農地の宅地化が進みました。そこで、2019年に特定生産緑地制度ができ、自治体の買い土地が10年間先送りされました。

しかし、高齢化社会で、農家の後継者が育たず、その制度があっても利用できずにどんどん宅地が乱立されていきました。生産緑地得なくなった農地は宅地並みに税金が上がります。利用していない宅地は税金が高くなりますので、マンション等が乱立しはじめました。

その結果、将来的に空き室や廃墟となってしまうリスクも心配されます。また、相続時に先祖伝来の土地を分筆相続するとなると、建築基準法上宅地にできない土地や相続関係が複雑化したり、いろいろ問題が発生します。

土地の等価交換によって融資を受けずしてマンションを建築して、マンションの保有数で遺産を分配することもできます。しかし、等価交換は双方の譲渡が発生して、譲渡税の徴収があるのでは、せっかくの等価交換制度も利用が難しくなります。

そこで、等価交換制度の敷居を低くしたのが「固定資産の等価交換の特例」の適用です。

しかし、この制度は、さまざまな条件があり複雑なのが難点です。そこでこの記事ではこの「等価交換の特例」について詳しく解説します。

土地の等価交換とは

土地を相続したときなどに、マンション等に利用したい場合、土地を売って建物の資金を工面して、それからマンション建築、というのが一般的です。

しかし、土地の等価交換制度を利用すれば、マンション建築のために高額な資金を土地の資産で賄うことができます。

例えば、土地の所有者が不動産業者等のデベロッパーに土地を出資して、デベロッパーが建物を建てて、その完成後に出資分の建物の還元床を取得します。還元床とは、土地の出資分だけの建物の床面積(部屋数)を所有することができるということです。

土地を出資してマンションを建てた場合、出資比率でマンションの部屋数を取得し、自分の自宅として使い、他を賃貸に利用する等が一般的です。

この場合、土地と建物を等価交換したときに、お互いに譲渡が発生するのですがその場合、一般的に贈与税が発生します。

しかし、贈与された分を即支払うわけですから、「税法上譲渡が発生しなかった」とみなす方が納税者のためです。その納税者のことを考えた特例が「等価交換の特例」です。

物々交換だから「お互い譲渡してもプラマイゼロだ」という感じなのですが、そうではありません。

税金がなくなるわけではなく100%繰り延べしてくれるだけなのです。そして、毎年減価償却していき毎年繰り上げていくので、税法上ちょっと複雑になってきます。

まあ、税法上の問題は少し置いて置いて、等価交換についてざっくりと解説したらこんな感じです。でも、何でも交換できるわけではなく、交換する固定資産の種類についての条件もあります。

等価交換だと認められないケースもあるということですので、等価交換できるケース、できないケースを認識する必要があります。

そのため、土地の種類について解説します。

「土地の等価交換の特例」の条件

「等価交換の特例」の適用条件

等価交換の特例は、物々交換のような物だと先に解説しましたが、「物」は固定資産です。固定資産は、固定資産税を払っている土地や建物等です。但し、税務署は贈与税を繰り延べされてその年の税金が減ってしまうのですから、制度の特例の悪用は許しません。

超高齢化社会の現代に、土地の所有者が不明になったり、固定資産税や相続税を払うために土地が売られて、マンションや賃貸物件が乱立して、管理されない雑地や空室、廃墟が増加してしまわないための、土地活用促進の緩和処置が「固定資産の等価交換の特例」なのです。

その制度の悪用を、税務署は許さないということです。だから、その制度の悪用と疑われたら、罰金や追徴課税の処分が適用されてしまいます。

そうならないために、一年以上の保有が条件となっています。土地の用途が同じまま利用されるように交換されるのも条件の一つです。農地は農地に、山林は山林に、宅地は宅地のままの利用です。

マンション等の乱立で農地がなくなったり、借地権が奪われたり、そんな悲劇が起きないように、「使用用途はそのまま」が特例の条件です。さらに、等価交換なのですから、その差額を金品で受け取ったら、所得や譲渡の対象となります。それには税金がかかります。

でも、固定資産税が、ピッタリ同じ資産価値である事の方が珍しいのですから、多少の差額は目をつぶらないと、この制度の恩恵を受ける人がほとんどいなくなってしまいます。

そこで、この特例には「多少の差額なら免除しましょう」つまり「差額が高い方の時価の20%未満なら、目をつぶりましょう」という条件付でもあります。

 等価交換の提供条件とは
※等価交換できるのは固定資産のみ

 等価交換できる固定資産
・土地、借地権、耕作権 ・建物、建物付付属設備、構築物 ・機械及び装置等

・等価交換する双方が、等価交換のために取得したと税務署から誤解を受けないために1年以上の保有が必要
・交換前の固定資産の用途は交換後も同じでなければならない
・等価交換時の双方の時価の差額がいずれか高い方の20%未満であること

「等価交換の特例」が適用できる固定資産とは

では、土地の用途の変更無しで等価交換するためには、土地の用途を知らなければなりません。等価交換の場合、交換する前と後が同じようとでなければなりません。

固定資産用途区分
土地農地宅地鉱泉地池沼山林牧場または原野その他
建物居住用事務所又は店舗工場用金庫用その他の用途

交換の範囲については所得税法58条に定められています。事例で解説します。その前に「宅地」の定義を解説しておきます。

宅地の定義
宅地とは「建物の敷地及びその維持もしくは効用を果すために必要な土地」のことを言います。

駐車場⇒宅地は?

建物の敷地及びその維持もしくは紅葉を果たすのが宅地ですから、駐車場がどんな駐車場であったかが重要です。青空駐車場だった場合(雑地として届)は、即宅地にできますので、「宅地に準ずる」として寛容されています。

しかし、コインパーキングや機械式立体駐車場、屋根付シャッター付車庫がついた駐車場等は、即宅地にできる「宅地に準ずる土地」として寛容されるのは難しいでしょう。

家庭菜園⇒宅地は?

家庭菜園においても宅地の概念で考えます。敷地の一部の広範囲に家庭菜園をしていたとしても、その土地に住居があり、その土地全体が生活のための家の敷地として利用されている場合は、宅地です。

借地権⇒宅地は?

借地権は、土地に建物を建てて使用する目的で、借地権を設定します。借地権は、底地(宅地と届け出)の地上権として長期使用していた権利です。

その地上権の建物と底地の宅地の等価交換は、同じ宅地の所有者と利用者の間での等価交換です。宅地は同じ使用用途が守られます。

事務所を併設した住居がある土地⇒宅地は?

事務所を併設していたとしても、住居がある以上、それは宅地です。この土地とマンションを等価交換するのは、使用用途が守られます。

マンションの通路として利用されていた土地⇒宅地は?

宅地の概念によって、マンションの通路は宅地の準ずる土地となります。それが「雑種地」という届け出であっても、「宅地に準ずる土地」といえます。

同一用途の期間について

判例によると、併用期間は2ヶ月が「相当期間」と認められたわけです。しかし、一般的に、一年以上の保有が望ましいというのが税理士会の意見です。

例えば、等価交換で取得した土地が農地だった場合は、1年ほど農地として保有し、その後宅地としてマンション建設をはじめるのであれば、等価交換の特例が認められるというのが税理士会で一般的とされています。

但し、使用用途を変更した時期にもよります。前年の確定申告では農地でも、年の途中で、宅地に届け出をして、その後半年以上あれば、次の確定申告の後であれば、だいたい1年保有ともされます。

ようは、マンション等価交換のために不正取得した農地ではなく、持っていた農地に偶然マンションに建替える話がきたから宅地に変更するのだ、というふうに税務署が思ったら良いということです。その一般常識の「相当機関の保有」に該当すれば良いということです。

宅地にマンションを建てたいとき

デベロッパーに相談するのがお勧めです。信用できるデベロッパー(ハウスメーカーや不動産会社)に土地を出資し、その土地にデベロッパーがマンション等建物を建てます。

土地の価格と建物の建設費には差額が生じます。その差額が、価格の高い方の20%以上の利益があった場合は、所得税や贈与税がかかります。

でもだいたいその差額が高い方の価格の20%未満の小額であった場合は、見逃してもらえます。

等価交換の方法

等価交換方法は、次の2種類があります。所有権移転のタイミングによって、呼び名が変わると理解しても良いでしょう。

等価交換
全部譲渡方式土地の名義を事業会社に移転して建物を建ててもらい出資比率に応じて配分。
一部譲渡方式土地の名義を持ったまま建物を建ててもらい、建物完成後に出資比率に応じて登記を行います。

等価交換のメリット

不動産投資の敷居が低くなる

等価交換のメリットは、マンションを建てるような多額な融資のリスクを負うことないので、融資のリスク無しに不動産投資ができるようになるのならと、不動産投資の敷居が低くなります。

立体買い換えの特例が受けられる

等価交換する場合、土地の所有者は、交換時にデベロッパーに土地を売る(一部あるいは全部)のと同じなので、所得税と住民税が上がります。

しかし、建物との等価交換なので、同等の大きな出費を伴うのですから、この特例に該当すれば、所得税を100%繰り延べることができるので、その年の所得税と住民税増加はありません。

しかし、等価交換の場合、現金で清算した場合は所得とみなされ、課税されてしまいますので気をつけましょう。

例えば、マンションの部屋数の割り当ての場合、等価交換で端数が出た場合、お金を払って1室余分に購入する場合は良いのですが、端数分をお金で支払われた場合はその金銭に税金が課せられます。

住居を持ったまま不動産投資が可能となる

土地をデベロッパーに指しだして、マンション等を立てた場合、建物が完成したときに、その一室を住居として利用し、等価交換分の他の複数の部屋を賃貸等不動産投資に使えます。

相続の分割がしやすくなる

相続の場合、不動産の分割はなかなか厄介です。しかし、全員が住居や相続分を確保できることになります。また、等価交換の特例によって、節税対策となります。

複雑な手続きはデベロッパーにお任せできる

等価交換は、土地の所有者とデベロッパーが双方の資力を出し合ってマンション等建物を建築します。

一般的に土地の所有者は、土地の所有権の移転を共有とするのかじょうととするのか、先に所有権移転をするのか、後から所有権移転とするのか等、話し合いによって決めなければならないことがたくさんあります。

しかし、土地をデベロッパーに利用させることで、建物を建築します。一般的に、面倒な手続きと建築全てをデベロッパーが行ってくれます。

等価交換のデメリット

等価交換の交渉が困難

まず、デメリット開設前に、地主とデベロッパーの出資について解説します。土地の市場価格の調査が必要です。地主の出資額は、土地の価格となるからです。

一方、デベロッパーの出資については複雑です。デベロッパーは手続き一切を請け負い、マンション等を建築した後、その空室を埋めるために営業活動等一切を行うのです。

いわゆるこのような広告宣伝費とそれに関わった人件費や手続き費用、これらの経費も利益に還元できないと、企業として成り立ちません。

ですから、デベロッパーの出資金は、建築請負金額、営業経費、広告費、手続き経費等の合計となります。表にしてみると以下のようになります。

出資金の内訳
地主出資金土地の市場価格
デベロッパー出資金建築請負金額、人件費、営業活動費、手続費用

人件費・営業活動費・手続き費用等は、地主からすると不透明です。もはやデベロッパーの誠意に賭けるしかないような領域です。

ですから、デベロッパーの出資金についてどのように交渉するかが問題となります。デベロッパーは交渉もプロですから、デベロッパーに有利に話が進みがちですから、出資金の詳細な明細書を提出してもらいましょう。

明細書だけ見ても、その数字が妥当かどうかは、翌わからないことも多いはずです。弁護士・司法書士・税理士等の専門家に契約前に相談することをお勧めします。

また、等価交換の方法は、出資比率による場合と売価還元による方法と2種類あります。順次解説します。

出資比率による方法

等価交換方法は、単純に出資比率によって行ってくれる場合は、一見単純で安心であるかのように見えます。デベロッパーの請負金額は請負契約書等を見せてもらうことで明確になります。

後は、人件費・営業活動費。その他手続き費用について、明瞭にしてもらうことをお勧めします。そして出資金明細書の内容に納得したら、お互いの出資金について案分して等価交換を行います。

このときに、等価交換条件に当てはまるかどうかも問題となります。土地の使用用途は土地と還元床の資金交換なのですから、使用用途についてはクリアします。

後は、交換差額についてです。いわゆる、マンションの土地代金分の部屋を割り当てられるわけです。等価交換でマンション等の等価考課するときの端数の支払いが問題となります。

「土地の代金>取得したマンション還元床(部屋数)」の場合、代金不足分は土地出費額の20%未満でないと等価交換になりません。

「土地の代金<取得したマンション還元床(部屋数)」で、不足分の代金を精算した場合は、一般的な購入と同じなので、譲渡・取得税等の税金はかかりません。この場合「等価交換部分についての差額=0」となります。

契約時に、どうするかを検討し、等価交換の特例に該当するような還元床になるよう契約する必要もあります。

売価還元による方法

売価還元方式は、デベロッパーがマンション等の請負金額に要した費用(人件費・営業活動費等々)を回収して利益を出すために必要な部屋数という物があります。

そこで、売価還元方式だと、デベロッパーの必要な部屋数の残りを地主がもらう形となります。

上手に交渉しないと、デベロッパーばかりが有利な契約となり、還元床が土地の代金分出資金より少なくなったりしますので、出資する市場価格を前もって調べておいて、損をしないよう交渉することをお勧めします。

土地の権利が失われる

等価交換ですから、土地の所有権が異動することを認識しておきましょう。出資比率によって共有部分ができたり、所有権を失ってしまったりする事になります。普通のマンション購入では、土地の所有権も案分されます。

等価交換は、土地を提供する代わりに、マンションをそれに見合った部屋数をもらうわけですから、気をつけないと土地の所有権無しの借地扱いとなってしまうこともあります。

そういった住居部分に見合ったの土地の所有権については、しっかりと確認が必要です。

一般的な不動産投資よりも利益が小さい

一般の不動産投資の時は、自分で建物を建てる必要があります。

一方等価交換は、請負金額が必要なく、土地を出資して融資のリスクを負うことなく不動産投資ができるので、お得な分、一般の不動産投資よりも収益が少なくなるというデメリットもあります。

等価交換の特例の条件を満たし、税金の繰越が毎年できます。その分減価償却費が小さくなります。

賃貸の収益から控除される金額が減少するわけですから、毎年の賃貸収益の課税所得が特例を受けない場合と比べて高くなり、所得税・住民税も高くなります。

相続等で土地を売って、そのお金を元手に融資無し・あるいは少ない融資でマンションを建てることができるような場合は、等価交換の特例を利用したときと、利用しないときで、減価償却費や利回りを計算してみて、どちらがお得か、比較検討することをお勧めします。

デベロッパーを選ぶとき注意すること

デベロッパーを選ぶときに最も注意すべきことは、その会社の業績と信用性、そしてその会社が立てるマンション等の施工実績と施工例をしっかりと調べるのも重要です。

等価交換の取引をして、土地の名義を変更した後に倒産されたり、逃げられたりしては大変なので実績の多い信頼できる会社をデベロッパーとして選びましょう。

また、その会社のマンション等の施工実績を見て、自分の好みに合った物件を建ててくれるのかどうかの確認も重要です。自分の住まいとして利用する場合は、とくにその辺を慎重に吟味しましょう。

そういった意味でも、デベロッパーを決めるときは、納得できるまで十分に担当者と話して、経験豊かなデベロッパーを探しましょう。

等価交換に向いている土地

等価交換の時の出資金は、土地の市場価格となります。つまり、土地の市場価格が高ければ高いほど、等価交換の時に有利となります。

つまり、土地が高く売れるためには、利便性の良い土地で、地盤も良く、接道部分が広く、接道の幅員も十分(4m以上)で、日当たり良し、土地の形状も良い、そんな土地として優秀であればあるほど、市場価値が高い土地といえます。

そういった土地は、一般的に路線価が周囲よりも高く設定されています。但し路線価は市場価格とは異なりますので、あくまで自分の土地の評価額を知る参考にして下さい。

極端に周囲よりも路線価が低い場合は、何か問題があると思った方が良いでしょう。また、マンション等建設予定地になるような不動産投資に向いている土地は、100坪以上の広大な土地がお勧めです。

狭い土地では、マンション等建設には不適当ですし、高層マンション用の狭い土地だったとしても、その土地の市場価格が建物1室と等価交換しても、住居部分の1部屋を確保するだけの資金に満たないかもしれません。

好立地で広い空き地は、デベロッパーの方から話を持ちかけてくることもあります。

まとめ

不動産投資と聞くと敷居が高いと思う方も良いかもしれませんが、融資のリスクを負わずに不動産投資が始められるのなら、等価交換の特例利用を検討してみるのもお勧めです。

但し、等価交換制度を利用する場合は、普通に自分で融資のリスクを負ってマンション等を建設するよりも、税金面で優遇されている分、利回りが少ないこともあります。

利回りや税金面について、シュミレーションしてみましょう。細かい計算については、税理士等お金の専門家に相談して、一番お得な方法を選択するのがお勧めです。

100坪以上の高大で好立地の土地をお持ちの場合は、等価交換の特例を利用して融資のリスク無しに不動産投資を始めるチャンスを得たと思って、一度専門家に相談してみることをお勧めします。

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